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乾燥木材の加工技術

製材単板切削乾燥鉋・研削接合接着塗装

乾燥の速さ

木材が乾燥する速さは、その材の周りの空気条件と木材の性質によって決まります。高温の乾いた空気の下では速く乾燥し、風が強くあたる場合や、減圧空気の中、あるいは外部から材に熱が多く与えられる場合などには、さらに乾燥が促進されます。しかし、外周空気条件が同じでも、樹種や材の厚さなど木材の種類によっては乾燥の遅いものもあります。

木材の乾燥は、まず表面から水分が蒸発して表面含水率が低くなり、内外の含水率差によって内部水分が表面に移動しながら進行します。乾燥初期の木材含水率が高い時は、相対湿度が低く、風が強いほど材表面からの水分蒸発が大きく、乾燥は速く進みます。しかし、木材内部の水分の移動はそれほど速くないため、しばらくすると表面の含水率のみが低くなって、乾燥速度は次第に低下していきます。したがって、この時期にも速い乾燥速度を得るためには、乾燥温度を高くして内部水分の移動を活発にしてやることが必要です。ただし、木材乾燥では温度の上昇が損傷の発生につながることが多いため、乾燥の対象とする材料によっておのずと制限があります。

木材中を水分が移動する速さは、木材の性質すなわち細胞壁の厚さ、壁孔の数や性状、細胞内の充填物の有無などによってさまざまで、樹種による違いが大きくあります。また、木材の含有水分量も樹種によって異なり、これも乾燥時間に影響します。このほか、木材の大きさや木取り方向の違いも乾燥の速さに影響します。材が厚くなるほど乾燥は遅くなり、乾燥時間は厚さの比の1.5~2.0乗に比例して長くなります。一般に板目材と柾目材では板目材が速く乾燥し、辺材と心材では辺材が速く乾燥します。

乾燥応力・損傷

乾燥が進むにつれて木材細胞は収縮しようとしますが、材の各部で含水率の減少量や収縮性能が違うため、木材中に乾燥応力が発生します。乾燥応力の大きさは乾燥条件の与え方や木材の性質によって異なりますが、これが大きすぎると割れ、狂いなどが生じることになります。

板材を人工乾燥する場合、一般に表層部は内部より先に乾燥し収縮しようとしますが、この収縮が含水率の高い内部によって妨げられるため、表層部は引張られた状態になって、乾燥割れの生じやすい状態になっています。

しかし、乾燥が進んで内部の含水率が低下してくると、表層部の引張り応力は次第に減少し、表面での割れの危険はなくなります。これに対し、内部では表層部とは逆に乾燥応力は初め圧縮で、途中から引張りに変ります。人工乾燥では木材を安全に速く乾燥するため、初めは天然乾燥よりもむしろゆっくり乾燥し、損傷の危険が少なくなってから乾燥速度を上げていく方法がとられます。このため、色々な乾燥方法が考えられています。

柱材や断面積の大きな材は、板材に比べ部分的に大きな乾燥応力が発生し、しかもこれがなかなか減少しないため乾燥に時間がかかります。ヒノキ、スギなどの心持ち柱材では、材の接線方向と半径方向の収縮量の違いによっていつまでも表層部に引張り応力が残っているため、含水率が相当低くなっても割れの発生する危険があります。このため、背割りをして割れを防いでいます。

表は乾燥による損傷の種類と生じ易い樹種ならびに材種です。このような材は乾燥の仕方に充分注意する必要がありますが、ほとんどの材は正しい乾燥操作によって安全に乾燥することが可能です。

蒸気式乾燥機

蒸気式乾燥室

蒸気式乾燥室

蒸気加熱式の木材乾燥機は現在最も広く普及しているものです。乾燥温度が40~120℃に対応可能で、家具材、床材、楽器用材、建築用材など幅広い用途に対応できることが特徴です。最近では建築用材を高温で乾燥するため、150℃程度まで対応できる装置も開発され始めました。

乾燥室内の温度調節は、ボイラーから蒸気を乾燥室内の加熱管に導き、加熱管からの放熱により行います。湿度の調節は、蒸気管からの生蒸気の噴射と吸排気孔の開閉によって行います。 排気には自然換気のものとフアンを用いて強制排気するものがあります。

室内の温湿度むらをできるだけ少なくするために空気循環用の送風機(フアン) が複数台設置されています。送風機は乾燥室内の天井部に設置されているものが多いのですが、側壁に置くものもあります。乾燥室内の温湿度を均一に安定して維持できるのがよい装置の条件で、そのためには送風方式や送風機の性能が重要です。

このほか制御する温湿度調節装置の性能がよく扱い易いことも大切です。また、壁体の断熱性や機密性を高めることは余分なエネルギー消費を抑え、乾燥経費を安くするのに有効です。

除湿式乾燥機

除湿式乾燥室

除湿式乾燥室

蒸気式に比べて操作が簡単で設置し易いことから建築用材、木工芸品等の比較的小規模の乾燥に用いられています。低温域の乾燥で材色をきれいに仕上げられることが特徴のひとつです。

蒸気式等の通常の乾燥法では室内の蒸発水分を換気によって排出しますが、除湿式の乾燥では室内の湿潤空気を冷却結露させるか、化学薬剤に吸着させることで排出させます。現在、広く利用されている方法はヒートポンプを用いて乾燥室内の水分を冷却結露させて排出する方法です。

ヒートポンプ式の除湿機は乾燥室内の湿度を下げると同時に、除湿機の凝縮コイルから出る熱を乾燥室内空気の加熱にも利用しているので、エネルギーの利用効率がよいのが特徴です。このヒートポンプ式の除湿機は冷媒の種類によって低温型(50℃以下)と高温型(70℃以下)があります。除湿機の性能はこの冷媒の種類によって異なります。

乾燥装置としての必要な性能は蒸気式とほぼ同じですが、ヒートポンプの特性を生かすために壁体の断熱性や機密性は特に重要です。ただし、送風量はやや少なくてもよいでしょう。また、乾燥開始時の室温上昇と、乾燥後期の室温維持のために電熱、蒸気、温水などの補助ヒーターが用いられます。

減圧式乾燥機

減圧式乾燥機

減圧式乾燥機

減圧乾燥は缶体内の圧力を40~80torr程度に保つことによって、水の沸点温度を35~50℃に下げ、次の方法で水分の蒸発に必要な熱を加えて急速に乾燥させる方法です。

  1. 常圧下で蒸気あるいは加熱空気によって材を加熱し、材温が上昇してから減圧して乾燥させた後、再び常圧に戻して加熱をする。(この操作を繰り返す)
  2. 減圧状態のまま熱板や高周波等によって材を加熱しながら連続的に乾燥していく。

このような方法で加熱され、比較的低温で蒸発した水分が材内外の蒸気圧差で早く表面に移動して急速な乾燥がおこなわれるのです。このため、落ち込みや変色の発生を少なくできる特徴があります。

減圧乾燥法は材内外の含水率差を小さく保ったまま乾燥できるので、一般の方法では困難な厚い材や乾燥の難しい材の乾燥に適しています。ただし、減圧乾燥では他の乾燥法以上に材の通気性の良否が適不適を決める重要な要素です。たとえば、ゴルフクラブ用材、工芸用材等のブロック状の材や、バット、家具脚物用材等の短尺材の乾燥には適しています。また、高周波加熱の方式では桟積みが不要なため、化粧用突き板を束ねたまま乾燥する場合に便利です。

乾燥スケジュール

針葉樹と広葉樹の乾燥スケジュール模式図
厚さ2.2cm程度の板材

木材は大気中に放置しておけば自然に乾燥しますが、この間に材は収縮し、しばしば割れや狂いなどの不都合が生じます。このため木材の利用に際しては、速く安全に含水率を一定のレベルまで下げる必要があります。樹種や材種に応じた適正な乾燥条件の与え方を示したのが乾燥スケジュールで、含水率スケジュールと時間スケジュールがあります。

含水率スケジュールは含水率変化に対する温湿度の与え方を定めたもので、木材乾燥の基本です。しかし、実際の現場では乾燥途中の含水率を知ることが容易でないため、時間スケジュールすなわち時間とともに温湿度を変化させる方式が多くとられます。このため、あらかじめ試験的に温湿度の変化と含水率減少経過との関係を求めておく必要があります。

<乾燥操作の要点>

乾燥初期:樹種、材種に合った初期温湿度条件を選択します。一般に広葉樹は乾球温度50℃、乾湿球温度差3~4℃。針葉樹は乾球温度60℃、乾湿球温度差4~6℃。蒸煮または加湿しながら温度を上昇させ、目標の乾燥条件に達したらそのまま一定値を保ちます。

乾燥中期:含水率が初期含水率の約2/3まで低下したら乾湿球温度差を除々に大きく(湿度を低く)します。ただし、樹種によってはこれより相当遅くまで初期条件のまま一定値を保たなければならないものもあります。乾球温度は原則的には含水率約35%までは一定にし、その後次第に上昇させます。

乾燥終期:含水率計などを用い、打ち切り時期を判断します。目標含水率に近づいたら調湿操作により、含水率の均一化と乾燥応力の除去をはかります。

針葉樹の乾燥

スギ平角材の乾燥

スギ平角材の乾燥

針葉樹材は乾燥初期に表層部に発生する引っ張りの乾燥応力が、なかなか減少していかないので、相当低含水率になるまで割れの発生する危険が残っています。特に心持ち柱材はその傾向が強く、普通は背割りの無い材を割れずに乾燥することは困難です。乾燥割れを防ぐには初期の乾燥条件を高湿にすると共に、途中からの温湿度の変化を小刻みに、あるいは連続的に行うのがポイントです。

乾燥方法、材種、仕上げ含水率と乾燥日数
材種:正角(10.5cm角)、平割(4.5cm厚)
仕上げ含水率:高周波式含水率計による

針葉樹乾燥では湿度の管理が正しければ、乾燥温度を上げてもそれほど損傷発生の心配はありません。むしろ温度が高いほど割れが発生しにくい場合もあります。ただし、乾燥温度を高くすると材色の変化が大きくなるので、用途によって最高温度が制限されます。 ヤニが多く含まれている材は、乾燥初期に高温で蒸煮し、引き続き高温で乾燥すると使用中のヤニの浸出を防ぐことが出来ます。また、減圧乾燥を用いるのも良い方法です。

板材、平割り材の乾燥

乾燥は比較的容易で、厚さ25mmの材では初期温度60~70℃、初期温度差4~5℃、厚さ50mmの材では初期温度差3~4℃が標準です。末期温度は70~80℃、末期温度差は15~20℃くらいにします。ベイスギなど一部の樹種で落ち込みの生じ易いものがありますが、この場合は乾燥温度を低くする必要があります。

柱材の乾燥

樹種、初期含水率、心持ち材、心去り材、背割りの有無、辺心材比率や年輪幅の違いなどによって乾燥の難易に大きな差があり、乾燥所要時間や経費が大幅に異なります。ヒノキは温度40~60℃、相対湿度が初期75%、末期45%くらいで比較的容易に乾燥できますが、スギは乾燥が難しく、時間が長くかかります。