接着木材の加工技術
製材単板切削乾燥鉋・研削接合接着塗装
木材接着の仕組み

スギ板とその接着物の写真
同じ種類または違った種類の材料AとBを第3の材料Cによって接合させ一つの材料にすることを接着といいます。この場合AとBを被着材、Cを接着剤といいます。接着の際には被着材と接着剤が接する面(界面)に水素結合やファンデルワールス力という分子間で引き合う力が働きます。この力の働きがもたらすもの(比接着)が、接着の主な要因と考えられています。

接着層の電子顕微鏡写真
一方で、木材の場合には接着面に道管などの開孔部が多くあるため、その中へ接着剤が入りこみ、ちょうど釘や錨のようになって(投錨効果)、幾分は機械的に接着へ貢献することが考えられます。
右の写真は、化学処理により木材部を取り除いた接着層の電子顕微鏡写真です。道管内腔などに接着剤がよく浸透しているのがわかります。木材接着の場合には特に投錨効果が有効であることが推定されます。

図1 Five link theoryによる接着層の構成
Fw:木材の強さ
Fc:接着剤の強さ
Fv:木材と接着剤の結合力
もしFv、Fw>Fcならば、破壊は接着剤層でおき、Fc、Fw>Fvならば、破壊は接着剤と木材の接する面(界面)で起きるので、Fw<Fv、Fcとなるような接着剤を選ぶことが大切です。
また、接着剤によっては、その成分が木材中の水酸基と化学接合(一次結合)することで接着にいくぶん寄与していることが、赤外線吸収スペクトルで推定されています。固体の表面はどんなに平滑に磨いても、その微小な凹凸をなくすることは出来ませんので、そのまま材料を重ねあわせても点と点でしか接触しないでしょう。したがって、接着剤は固体の表面の凸凹を埋めて、表面全体が接触するようにしなければなりません。
そのためには1 流動が容易なこと、2 被着材をよく濡らすこと、3 液状の接着剤が塗布後固まってから、一定の強さをもつ、4 接合した部分に、接着剤の物理的、化学的変化による体積収縮や残留応力がおきないなどの条件を満たすことが必要です。
いずれにしても、接着後は製品の破壊が被着材と接着剤の間や接着剤の層の中におきずに、被着材のなかにおきることが、接着にさいして望ましいことです。ということは、接着する力が接着した木材自身を破壊する力よりも大きいと、よい接着が出来たといえることを意味しています。

図2 接着剤に対する接着剤の接触角(θ)
接着剤液が木材表面をよくぬらすほど、接着剤は木材のすみずみまでゆきわたって密着し、接触面積も増えます。このことが接着強さを増やす一つの要因です。
接着剤が固体表面をぬらす現象を”ぬれ”といい、ぬれの程度を接触角θまたはcosθであらわします。θが小さいほど(cosθが1に近くなるほど)ぬれはよくなり、接着も良好となることが考えられます。