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木造校舎と鉄筋コンクリート(RC)造の環境の違い

▶ 公共施設等の木材利用推進マニュアル(改訂版/平成13年3月)

付録2:木造校舎と鉄筋コンクリート(RC)造の環境の違い

木造の料学 木造校舎と鉄筋コンクリート(RC)造校舎の環境の違い


a. 木の建築 21号(1991年) 橘田紘洋 より

a. 木の建築 21号(1991年) 橘田紘洋 より

学校の環境衛生は「学校環境衛生の基準」に基づいて整備されることになっており、教室の温湿度についても定めてあります。温度や湿度などを主要な因子とする室内気候は、そこに生活する人の脳の覚醒状態(数々の行動を支えている中枢神経機構の活動状態)を左右したり生理機構に影響を与えます。従って、精神集中を要求される学校では大切な環境因子ですが、案外注目されていません。「基準」では教室内の温湿度を机の上の高さにしていますが、教室内で生活する生徒や教師の生理機構への影響や快適性を探るためには、床付近と頭上の温湿度及びその差が重要な因子となります。なぜなら、子供はしばしば床に座って遊んだり作業をする傾向を持つ上、足もとの低温は眼精疲労など疲労感を高め全身不快の原因となるからです。また、頭上の高温や温度差はのぼせや倦怠感あるいは集中力の欠如も起こします。

床付近の温度は冬に厳しくなるので、子供が生活する8時から15時までの時間帯における冬期(12月~3月)の床付近(床上5cm)の温湿度について、木造校舎と鉄筋コンクリート造(RC)造較舎とを比較すると、図1のようになります。RC造では10℃以下の低温の時間帯が多く現れており、全体として10℃前後の温度域に分布しています。また、低温度域に高湿度状態が現れています。このことは、ひんやりして冷たい感覚を増大させることになります。住宅などの冬期の床面温度は、快適性の点から13℃を下限温度とすることを考え合わせると、RC造ではあまりにも厳しい状況が起きているといえます。一方、木造の温度は15℃付近を中心に分布しています。また、湿度はRC造教室に比して分布幅が狭く、50%付近に集中して分布しています。この温湿度域は雑菌の繁殖を抑制する効果があります。木造には、低温高湿度状態が見られないことは、RC造に比較して特に顕著な特徴といえます。点線は「基準」に示された値(温度10~30℃、湿度30~80℃)です。ちなみに、床付近の環境を基準値に当てはめると、木造では足元でも就業時間帯の80%前後が基準値内に入りますが、RC造では45%前後と半減してしまいます。

図1 冬期の修学時間帯における1階教室内の温湿度の散布図

図2 灯油ストーブ採暖時の教室内の垂直温度分布
(1990年3月1日)

教室の温度が低ければ、ストーブなどによって採暖することになります。このとき、教室内には部位によって温度のムラができてしまいますが、床から天井までの垂直方向の温度分布を調べると図2のようになります。両教室とも上層にいくほど温度が高くなっていきますが、その傾向はずいぶん違っています。つまり垂直温度分布の差が著しいのはRC造であり、特に1階の教室に顕著に見られます。椅子に座った生徒の頭の位置を1mとして床面と頭部の温度差を見ると、木造建築では4℃前後ですが、RC造では9℃もの差が生じています。さらに立っている教師の頭部を160cmとして床面との差を見ると、木造ではあいかわらず4℃ですが、RC造では11℃もの温度差になってしまいます。このような差が生じるのは、床・壁面の暖まりやすさが関係しているようです。この結果から、RC造では生徒、教師ともに足より頭の方が温まっていて、のぼせやすくなっていることがうかがえます。一般に床面との温度差が3℃以上あると不快感を覚えるといわれているので木造の方にも問題はありますが、RC造ではとても精神集中のしやすい環境とはいえません。

教室内環境は木造とRC造との間に大きな相違があることを、冬期の温湿度環境に着目してみてきました。このような温湿度環境をも含めた教室内の環境の相違は、そこで生活する生徒や教師の情緒面や生理機能などに様々な影響を与えていることが十分に予想されます。表1には、人工密度600人/km2以内の地区(木造校舎はそれ以上の人工密集地には少ないので)にある木造とRC造の小学校に勤める教師の健康状態を調べたものです。女性教師は男性教師より環境を気にする傾向が見られますが、特にRC造較舎に勤める女性教師は木造校舎の教師より神経質になっていて、生理的にも好ましくない状態になっていることがうかがえます。

人は環境と調和しながら生活しています。学校においても同様で、子供と教師の作る社会的な環境の重要性は無論のことですが、社会的環境を形成する個々の人間自体が建物のつくる物理的な環境から絶えず影響を受けている以上、社会的な環境も多かれ少なかれ、物理的な環境に影響されているといえます。穏やかな物理的環境や社会的環境を形成するには、RC造校舎より木造校舎の方が良さそうです。

表1 小学校教師の健康状態(人数)

注1: ***:危険率1%以内で有意,**:危険率5%以内で有意,*:危険率10%以内で有意


注2: 校舎間比較ではRC造校舎が、男女間比較では女性の方が有意に顕著であるが、
   (木)**は木造校舎に顕著である


症  状木造校舎RC造校舎有意差(χ2検定)
男性
教師
女性
教師
男性
教師
女性
教師
木造-RC造
校舎比較
同一校舎内
男女間比較












男性
教師
女性
教師
木造
校舎
RC造
校舎
a.長時間立っているのが辛い
b.喉が乾く
c.イライラすることがある
d.残響音が気になる
e.他教室からの音が気になる
f.教室が明るい
g.夏期の教室内は暑い
h.冬期の教室内は寿い
i.冬期は足元が冷える
j.生理不順が起きる
38
121
78
153
89
116
48
31
56
-
115
94
134
61
122
97
168
183
150
-
76
125
55
150
47
125
55
19
45
121
136
89
160
82
166
88
160
196
163
89
111
152
94
182
143
127
49
44
82
-
148
117
174
87
137
139
222
232
186
-
86
160
52
206
57
190
59
28
53
128
230
152
263
104
264
124
256
286
249
171
-
-
-
-
(木)**
-
-
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-
**
*
**
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