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木材を使うと高くなるのでは?

▶ 公共施設等の木材利用推進マニュアル(改訂版/平成13年3月)

Q4:木材を使うと高くなるのでは?

木造建築は、鉄筋コンクリートや鉄骨の建物に比べてコスト高になるのでは?


必ずしもコスト高になるわけではありません。ただし、適正なコストで建設するためには、木造建築ならではの工夫が必要となります。

a. 適正なコストで木造建築を建てるには
b. 他の構造とのコスト比較

a. 適正なコストで木造建築を建てるには

木造建築の場合、適正コストで性能の高いものを計画するためには、他の構造とは異なる配慮が必要になります。他の構法では、工業製品を使いますが、木造は自然素材を使います。従って、他の構法では設計者・施工者が計画した通りの性能・サイズの製品を使うことになりますが、木造では手に入る木材に合わせて設計・施工を行うことになります。もちろん、他の構法と同じように要求したものを探すことは可能でしょう。しかし、そのようなプロジェクトの進め方をすると、コストが高くなります。木造がコスト高といわれるのは、このような設計者、施工者の経験不足による場合です。では、どうすれば適性コストで木造建築が可能なのでしょうか?キーワードは次の4つです。

1.無理のない材の選択

地域で一般に流通している材種、材寸を把握し、設計に反映させる。

2.木材調達のタイミング

長大材や大量の木材は急には揃わない。早めの手当てを怠るとコスト高になります。また生材の使用は故障の主要因となるため、十分な乾燥期間を確保するためにも、早めの手当てが必要です。

3.在来の技術の活用

地域の大工で対応できる技術で計画すると、特別なコストがかからない。また、地域の経済効果が見込めるばかりでなく、技術・技能の伝承につながる。

4.耐久性・メンテナンス計画への配慮

建物のコストは建設コストだけではない。ライフサイクルコストを低く抑えることが求められる。

これらに十分配慮したものであれば、品質に見合ったコストで建設することは可能であるし、その例は全国各地で見ることができます。


b. 他の構造とのコスト比較

建築物のコストは、建物の条件によって大きく違います。見た目は同じような、同じ構造の建物でも、地盤の状況、周辺環境(施工しやすさ)、採用した構法などで異なる場合もあるのです。したがって、どの構造が安いか高いかは、簡単には判断できません。ただし、大まかな傾向を把握したデータがあるので、紹介します。

ここでは木造と、RC造・S造・SRC造の総工費を比較しています。データの出典は以下の通りです。ここで集めたデータは、体育館やスポーツ施設、水泳場などの用途に供するものです。

木造:

・木材利用推進中央協議会「公共建築物の木造事例集」のそのⅤ(1991年)~そのXl(1997年)

RC造グループ:

・全国営繕主管課長会議監修、社団法人公共建築協会発行 「特殊建築物計画資料集」
平成2年度版~平成8年度版
・建設資料研究社発行「建築設計資料41体育館・武道館・屋内プール」平成5年

これらのデータのうち、木造建築が多く分布する規模(延べ床3,000m2以下)について、建設費と延べ床面積の関係を示したものが図8です。これを見ると、延べ床2,000m2程度までの比較的小規模のものについては、木造の方が価格的に有利であることが分ります。図9には、単位面積当たりの建設費と延べ床面積の関係を示します。こちらでは、木造とは正反対にRC造グループでは、面積規模が大きくなるほど単価が安くなる傾向があります。

図8延床面積(3000m2以下)-建築費
和歌山県農林水産部林業振興課編
「和歌山県木質材料設計マニュアル(本編)」,1999
(グラフをクリックすると拡大した画像がご覧になれます。)

図9延床面積(3000m2以下)-単位面積あたり建築費建築費
和歌山県農林水産部林業振興課編
「和歌山県木質材料設計マニュアル(本編)」,1999
(グラフをクリックすると拡大した画像がご覧になれます。)

つまり、RC造グループでは、特大空間をつくる時のように、特殊な構法が必要な範囲においてはスケールメリットが顕著に表れてくるのに対し、木造ではある程度以上に規模が大きくなると特殊な構法が必要になったり、用材の確保に難を生じたりするため、それがデメリットになると考えられます。

体育館のような施設では、延べ床面積が2,000m2付近までは木造建築が有利であることがわかりましたが、他の用途の建築では、内装や設備の比重が大きくなってくるため少々様子が変わってくることが予想されます。しかし、先に述べたようなキーワードをふまえた計画さえすれば、少なくとも基礎を含めた躯体工事においては木造が有利であると考えられます。