インドにおける木材資源と木材利用

木材資源と利用の概況

インドにおけるアグロフォレストリーと森林外植林(TOF)は、急増する人口の需要を満たすための産業用木材と薪材の重要な供給源となっている。TOFは国土の9%、3000万haを占め、平均成長量は56m3/haと推定され、木材の潜在的収穫量は8500万m3である。TOFの重要な樹種はマンゴー、キカール、ユーカリ、ゴム、シシャム、ポプラである。TOFは木材産業の原材料となり、重要な雇用を創出している。また、TOFは森林炭素吸収源の38%を占め、森林被覆を33%にするという政策目標の達成に貢献している。

なお、森林地域からの木材収穫量は、1970年代は1000万m3あったが、1996年に最高裁判所において、森林計画に基づく伐採以外が禁止されたこと及び木材産業の開業が規制されたことにより、現在は300万m3以下となっている。

インドの合板及びパネル産業には、3,300の工場があり、年平均成長率は6〜7%、3750億円の市場規模で、100万人の生計を支えている。なお、工場の8割は組織化されていない。

合板については、インドは世界のわずか4%を生産しているに過ぎず、PBとMDFの生産シェアは、世界の1%未満である。合板及びパネル産業用の原木は、アグロフォレストリー又はTOFのいずれかから得られている。

大きな木材需要を満たすため、1990年代から木材の輸入政策が自由化されてきた。インドが輸入する木材の上位4種は、チーク、グルジャン、メランティ、ブナであり、主な輸入相手国はミャンマー、マレーシア、インドネシア、ナイジェリア、ガーナ、トーゴ、ガボン、ブラジル、パナマ、ニュージーランドである。インドの木材および木製品の輸出入は増加傾向にあるが、輸出は輸入に比べてはるかに少なく、 2019-20会計年度には、6600億円の木材および木製品が輸入され、丸太相当で1500万m3の丸太及び木材製品が輸入された。

家具および手工芸品産業

インドの木製家具市場は、85%が組織化されていない。家庭用家具は売上の65%を占め、また、木製家具は家具全体の65%を占めている。 材料としては、無垢材は80%であり、残りの20%は、合板、パーティクルボード、MDFである。大部分は、最新技術や機械を入手する余裕がない組織化されていない業者により生産されている。

地場業者の取引には14.5%の消費税が課せられているが、一方で家具の輸入は免税となっており、当該セクターの成長に悪影響を及ぼしている。

インドでは85〜90%の木製家具、建具、家庭用品は注文生産で、小さな工房または個々の職人によって作られている。インドの木製手工芸品は、その美しいデザインにより世界中で需要がある。木製家具の50%はチーク、30%はマンゴー、シーシャム、マホガニー及びシーダー、20%はサルを使用していると推定されている。

既製のブランド家具への嗜好が高まり、市場は組織化されつつある。国民の嗜好は、注文オプションを備えた高級品、メンテナンスが容易で設置が簡単な製品に傾きつつある。

組立て家具では、エンジニアウッドの使用率が高まっており、重厚な伝統的な家具よりも、シンプルで現代的なデザインが好まれるようになっている。

インドの家具産業は、原材料の非競争力、小さな運用規模、非効率的流通といったハンディはあるが、低コスト労働力の優位性により、世界のトップ3に成長する可能性がある。小規模ではあるが差別化された家具デザイン能力は、IKEAのような世界のトップ家具バイヤーに好まれよう。インドの国内家具市場は、2020~24年の間に年率12.9%で成長すると予想されている。改訂予算では、南部のタミルナドゥ州に、国際家具公園を設立することが提案されており、35万人の雇用を可能にするとしている。