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やまだひさし インタビュー

「間伐材って、パンの耳みたいなものね(笑)。けっこう食べちゃうんだよ、あれ、おいしくて」

3月に初の著書本
『やまだひさしの日本縦断(エコ)アンリミテッド』を
出したばかりのやまだひさしさん。
その訪問地のひとつに宮城県、栗駒高原がありました。
その取材での経験、
木材に触れることが多かった少年時代の話など
木や木材にまつわるエピソードを伺いました。

──まずはご自身と木のかかわりについてお聞かせください。 ボクの親父は日曜大工が趣味だったから、木材を買いに行くとこから付き合わされてきた。でも行くところは東急ハンズじゃないなんだ(笑)、田舎だから家の建築材を作っているような木材屋さんで、切れ端とかを買いに行ったりしていた。そういう木って、まだ伐り立てで、ヤニ(脂)とかついていてベタベタするし臭いから、あまり楽しくなかった(笑)。でもその匂いで「あ、この木は山でクワガタを捕った木と同じなんだ」と記憶と目の前の木材が、一致するんだよね。
ずっと家を建てたいと思っていた親父は、ボクが小学校3年のときに家を建てたんだ。建てるとこをもよく見に行っていた。「これがひさしの部屋だぞ~」って言われてね。更地でそんなこと言われてもわからないんだけど(笑)。柱が立って梁が渡されて、壁が出来て、階段の足組が出来てって、「うわぁ楽しいなぁ」と思った。全部木だから、木の匂いがしたし、新鮮だった。だからボクは「家は“建てる”もの」と思っていた。“買うモノ”っていう発想はない。“建て売り”なんて、なかったしね。でも建て終わったら、転勤が決まって他人の家になっちゃったんだ‥‥哀しかったね(笑)。

──今回「やまだひさしの日本縦断(エコ)アンリミテッド」という本を出されました。山での伐採も経験されたそうですが、その取材はいかがでしたか。 けっこう木って伐っていいんだ、って正直思った(笑)。木、伐っちゃったよ、いいんですか?って。そのときは“間伐”という言葉も知らなかったから、“森林伐採=環境破壊”みたいな気分になっちゃったけど。伐っていいもの、悪いものがあるんだなと知った。なんでも守ろうみたいなものとは違う。木を伐っている人は悪い人、みたいな情報のみが流れるけれど、ほんとうのこととは違うなと思った。
伐らなきゃいけない木はちゃんと存在するし、運び出すルートもあって、決められた数もあるというのをこの取材で学んだから。そうやって森は守られているんだなと実感したな。でもホント、知らなかったよ。伐るだけで悪者扱いかと思っていたから(笑)。
でも実際に伐ったときは、ちょっと可哀想と思った。木を伐るなんて初めての経験だったし。だって、伐った切り口から水がジュワーって溢れるほど出てきちゃったからね。透明だったけど、血液みたいに思えた。“うわー、生きていたんだ”って。不思議だったね。だからこそ、大切にしなくちゃって思ったよ。牛や豚みたいな食べ物と一緒だよね(笑)。こういうものたちに支えられてボクたちは生きているんだなって、つくづく感じた。そういったものを見直さないといけない。でも柱になっちゃったり割り箸になっちゃったりしてしまうと、実感がないよね。板切れになっちゃってたら、“木”にはつながらない、わかんないよね。そう感じたな。

──この本は全て間伐紙でつくられていますよね。 “間伐”という言葉の意味がこの本を作ったおかげでわかったの(笑)! ラジオのリスナーにもちゃんと説明しているよ。森の木を整理することできちんと育つということとか。それに伐った木や木材部分はどうなるの?っていうこともこの本を作ることでわかった。
“間伐材”って、ボクが子どものころあった、サンドイッチ屋さんであまった『パンの耳』みたいなものなんだね。白いパンの部分はサンドイッチになる。それで残った部分ね、そのうちあっちのほうが美味しくなったりしてさ(笑)。あれを捨てているサンドイッチ屋さんでは、パンの耳を見ることすらなくて。でもパンの耳を売っているパン屋さんもあった。本来の材木も間伐材もどっちだって大事なんでしょ。間伐材が紙の材料になってこの本みたいになったり、ボールペンとかになるっていうし、名刺にもなるんでしょ? 間伐材だけでできた家具とか、そういうものもわかりやすく商品になるといいよね。

インタビューと構成・いのうえなおこ


やまだひさし

5月4日生まれ、北海道出身、A型。TOKYO FM/JFN系列全国36局ネットプログラム『やまだひさしのラジアンリミテッド DX』のメインパーソナリティ。フジテレビ『感動ファクトリー!すぽると』のナレーションをはじめ、スペースシャワーTV『ゴゴイチ!』のVJなど地上波・衛星波のテレビを中心に活躍。最近では、映画の吹替えや声優にも挑戦する。また雑誌では心とカラダにやさしい生活雑誌『Lingkaran』(ソニー・マガジンズ)のコラムも連載中。自称カリスマ・エコDJ。まくし立て系早口本音トークの第一人者として定評がある。最近3月にエコマインドのある人々を訪ね、食べ飲み歩いた旅の本『やまだひさしの日本縦断(エコ)アンリミテッド』(ソニー・マガジンズ)を出したばかり。