木netのロゴ画像

ホンモノの木に目覚めたわが家

山口みかんさん(東京都)

10年に及ぶ賃貸生活にピリオドを打ち、わが家も昨年念願のマイホームを購入した。とはいえ、わが家の経済力では都内に満足のゆく一戸建ては望むべくもなく、鉄筋コンクリートのマンションが精一杯。それでも夢のマイホーム、せめてオプション部分ではこだわりを……と、3LDKのすべての部屋の壁に新建材『呼吸する壁』というのを貼り付けた。その前に借りていた部屋は結露がすごかったのだ。この『呼吸する壁』は、セラミック素材で出来ていて、湿度調節をしてくれるうえ悪臭、有害物質なども吸着してくれるという優れもの。おまけにデザイン、色、柄も豊富で、お気に入りを選りすぐり、なかなか素敵なお部屋になったと満足していた。メーカーの謳い文句どおり、部屋の中はいつもサラッとしているし、ホルムアルデヒト臭もない。

ところがこの新建材、困ったことがひとつ。それは硬いこと。絵の一枚も飾りたいと思っても釘が打てない。子供が走り回って壁にぶつかった拍子に怪我をしたときには、さすがにちょっと考えてしまった。

無垢の木材に調湿作用があり、有害物質などの吸着機能もあると知ったのは、それからしばらく経ってからのことだった。新建材に頼らなくても、木材こそ「呼吸する壁」だったのね。もっと早く知っていれば、というか、マンションのビルト・イン・オプションのカタログの中に「木壁」という選択肢があれば迷わずそっちを選んだのに、残念。

そう思って改めてうちの中を見渡してみると、無垢の木なんてひとつもない。ということで、今年入学した下の子のために、秋田杉でできた学習机を購入した。届いた机は思いのほか軽く驚いた。それに、針葉樹の肌当たりがこれほど柔らかいとは知らなかった。買ってそろそろ半年になるが、いまだに木の香りが部屋いっぱいにあふれている。届いたばかりの頃は白かった色が、段々赤茶けてきたのもなんともいえず味わい深いし、手触りの心地よさといったらない。「木の温もり」ってこういうことなんだなあと思う。これも机が呼吸しているから?隣にお姉ちゃんの学習机があるが、こちらは何のこだわりもなく買った木製机。天板はなにでできているのだろう。こうしてふたつ並んだ机を見ていると、お姉ちゃんの机は「これはいったい“木製”といえるのかな」と疑問に思えてくる。

ひとつホンモノをもつと、ニセモノが何かがよくみえてくる。以来、子供のおもちゃを買うときも、まな板を買い換えるときも、無垢の木にこだわっている。これからはわが家にも少しずつホンモノが増えてくるだろう。

そしていつか、この部屋をリフォームするときは「呼吸する木壁」に囲まれた部屋に住みたいなと密かに思っている。