木netのロゴ画像

木造住宅の耐久性住宅の種類と木造住宅

住宅の種類木造住宅の居住性木造住宅の耐久性ログハウスの特徴

木造住宅の耐久性

木材および木造住宅が生物的、物理的、化学的要因などによって、始めに持っていた性能が低下していくこと(劣化)および時間の経過にともなって性能が段々に低下していくこと(老化)に対してどれだけ抵抗性があるかを示すのが耐久性です。さらに、これらとは、異なりますが、火、地震などに対する抵抗性も、耐久性の要因のなかに含まれるでしょう。

上述の要因を詳しくみると、物理的なものとしては、熱、水分、光、応力などが、生物的なものとしては、腐朽やシロアリなどによるものがあります。また、最近のように大気の汚染がひどくなると、当然、その影響として化学的なものも無視できなくなるでしょう。

現在では、世界的に森林資源の減少が明らかで、その有効利用は大きな課題となってきております。したがって、木造住宅がより長期にわたってその能力を維持できるように、耐久性を高めることは、欠かすことの出来ないことでしょう。そのためには、木材を始めとした各種建築材料の性能向上のみでなく、それをどう使うか、どのようにしてその中に住むか、どのようにして維持管理していくかを幅広く考えなくてはならないでしょう。

わが国は古くから、優れた建築技術をもち、数多くの大型の建築物は長い年月を経ても、いまなお、十分に利用されております。この伝統を受けて、現在入手出来る材料を高度に利用して、日本の気候風土に適合した耐久性の高い木造住宅の建築をしたいものです。

住宅の中で腐れやすい場所

土台の腐朽

木造住宅の木質部材を劣化させる木材腐朽菌やシロアリが生育・活動するのには、空気・栄養分・温度・水分が必要ですが、このうち、空気と栄養分(木材)は常に供給されていると考えられます。

また、わが国では、腐朽菌やシロアリが生育・活動できる気温の期間はかなり長く、したがって、木質部材を劣化させる生物の生育・活動の程度は、水分条件によって決定されるといえます。

図1 モルタル外壁(在来軸組)建物の、方位による部材の含水率(MC)の違い
(所在地:神奈川県、築後約30年、外周布基礎)

腐朽菌糸が生育し、シロアリが活動する水分条件は、ほぼ繊維飽和点(含水率約30%)以上です。つまり、木質部材に液体状態の水分が供給され、しかもその水分が一定期間以上滞留すると、その木質部材には生物劣化をうける危険性が生じることになります。

そして、水分の主な供給源は、雨水の屋根からの浸入や外壁への掛かりなど、配水管の故障等による使用水の漏れ、外壁内の結露水、床下の土中水等による滞留湿気です。木造住宅において、生物劣化をうける危険性は、建物の立地や周囲の環境、構法・施工、部材の種類、建物中における部位(方向や高さ)、建物の破損や欠陥、建築後の経過年数、住まい方や補修の程度などによって異なります。

以上のような点から、一般的に、部材の種類としては、根太・大引・土台などの床組部材や外壁の柱の脚部が生物劣化をうけやすく、建物中の方位としては、北・北東・北西で生物劣化をうける危険性が高くなります。また、軒やけらばの出が少ないと雨水が外壁の下部に掛かり、また、床高が低い、床下換気口面積が小さい、床下に防湿施工がない場合などは床組に水分が滞留し、生物劣化をうけやすくなります。台所や風呂場等の、いわゆる水回りの部材も生物劣化をうける危険性が高くなります。そして、生物劣化をうけにくくし、住宅の耐久性を延ばすには、維持・管理も含めた住まい方も重要です。

木造住宅の耐久性(木材の虫害)

しろありの蟻道

木材を食いあらす害虫として、シロアリは有名です。シロアリは湿った木材を食害しますので、腐朽菌による被害とほぼ同じところに発生しますが、光を嫌うので、特に見えない、暗い場所には注意が必要です。

シロアリは南方系の害虫ですからあまり寒い地方にはいません。

北海道中部以南に生息する、ヤマトシロアリ、関東地方南部海岸地帯を北限とするイエシロアリが主なものです。ヤマトシロアリは湿った材-浴室、台所等の床下材の被害が多く腐朽の被害と併行します。

ヒラタキクイムシによる被害

イエシロアリは、西日本の海岸地域に多く生息し、大集団を形成し、水運搬のための蟻道を作り、乾燥した上部の木材をも食害し、コロニーの個体数も多く、食害の速度は早く、被害は極めて大きいものです。

乾いた材を食べる害虫としては、ヒラタキクイムシがあります。

5~6月頃、多くの木粉を積み上げ、 1~ 2mmぐらいの穴があくので、この虫の被害を知るようになります。このときは、成虫が産卵のために出できたもので、この数日後産卵し、幼虫は、木材内部を食べ、翌年春成虫になります。木材のでん粉を食べるので、食害されるのは、広葉樹の辺材が主です。

ヒラタキクイムシの被害(辺材について)
林業試験監修:木材工業ハンドブック、丸善(1982)抜粋


木造住宅の耐久性(木材の防虫)

しろあり

乾いた材を食害するヒラタキクイムシに対しては、辺材の使用にあたっては十分留意をする事が必要ですが、実際には内装の下地に南洋材の辺材などが使用される事が多く、そこに生息していた虫が、内装の合板に穴をあけて出てくるような害が目立ちます。家具材は、熱をかけて乾燥したものを使用しているので、家具からの発生はありませんが、室内での 2次的な発生はないとは云えません。

しかし塗装は、産卵を妨げるので、塗装の効果は充分あります。ヒラタキクイムシが合板内で生息できないように、合板製造時に、接着剤に防虫剤を混入して製造する方法が確立され、実用化されています。製材品、合板、フローリング材などの防虫処理として、ホウ素化合物、有機リン化合物の防虫剤が使用されています。

シロアリの被害に対する方法としては、JISで規格化された薬剤が、防腐と防蟻の両方の効力を持っているので、これらの薬剤が十分滲透している材を用いればよいでしょう。ヤマトシロアリはアカマツ材を好みますので、建物敷地内の土壌中にこのような餌となるような材を残さないよう、きれいにすることも大切です。イエシロアリ生息地では、土壌処理も有効です。この場合は環境の汚染を十分考慮して行うことが大切です。

イエシロアリの羽化は 6~ 7月頃、ヤマトシロアリは 4~ 5月頃です。屋内でシロアリの羽アリを発見したらば、シロアリ被害の発生している危険信号です。発生のおそれの多い水まわり、床下などを十分に調査しましょう。蟻道も発見の一つですが、材の被害は、針のようなもので材を刺すことによって発見できます。発見したらば、適切な処理をすぐに行って下さい。

表 アリとシロアリの比較

木造住宅の耐久性(木材と火)

木造住宅というと、火に弱いということが話題になることが少なくないでしょう。木材は有機物ですので、条件が整えば、炎が出て燃えるようになりますから、火に弱いといえるでしょう。木材は加熱されると分解し、可燃性のガスを発生し、それが燃焼するようになり、さらに、その熱で、周囲の木材が加熱分解され、燃焼が連鎖的に広がっていきます。木材を構成する主要な成分のセルロース、ヘミセルロース、リグニンなどはそれぞれ燃焼の仕方が違います。ヘミセルロースは 200℃以下で分解し始め、 300℃付近で終わり、リグニンの分解はヘミセルロースとほぼ同じ頃始まりますが、ずっと高い温度まで続きます。セルロースは 300℃で急激に分解し始めます。

木材は比重が低く、熱を伝え難く、そのため、燃焼は表面からだんだんと中へむかっていきますが、内部では酸素が不足するようになり、より熱伝導率の低い炭化層が作られるようになります。木材は金属材料より火災に強いといわれることがあります。それは、金属材料は熱によって軟化してしまうのに対し、木材の表面からの炭化速度は比較的遅く、一分間に、 0.6mmくらいといわれており、30分間経過しても18mm、木材の両側からみても36mm減るだけですから、木材が十分太いか、十分厚ければ、木材の力は急激には減らないからです。よく話題にされる木造住宅の大きな火災被害は、大きな断面の木材を使えば、かなり防げる筈です。

木造住宅の火災対策(外部)

火炎実験:建築仕様及びドア・窓の開閉による延焼の状態

私達の住んでいるところは、建築基準法によって、防火地域、準防火地域、22条地域及びそれ以外の地域と分けて指定されています。防火地域では、延べ面積100m2以下、準防火地域では1,500m2以下、その他の地域では3,000?以下の木造建築物を建てることができます。

防火地域で建築できる100m2以下、2階建て以下の木造建物は準耐火構造という防火性の高い建物を建てることが必要ですが、準防火地域では500m2以下であれば3階建ての木造戸建て又は長屋住宅が建てられ、準耐火構造とすれば1,500m2以下の3階建て木造建物が建てられます。但し、木造3階建て共同住宅は防火地域、準防火地域に建築することができませんが、その他の地域で3,000m2以下であれば建築できます。

これらの地域指定のうち、最も多く木造住宅が建てられるところは、準防火地域として指定されている地域です。準防火地域は住宅が密集しているため、類焼(もらい火)するおそれが大きい地域です。従って、これらの地域では、類焼のおそれのある部分(隣地境界線,道路中心線等から1階で3m以内、2階以上で5m以内)の木造建築物の外壁、軒裏は防火構造とすること及び屋根は不燃材料とすること等が建築基準法で決められています。

防火構造は、モルタル塗り、不燃性材料の防火サイジング、金属板張り等の燃えにくい材料で外壁を造る必要があります。屋根は飛び火による類焼を防ぐために日本瓦、スレート瓦、金属板等の不燃材料と呼ばれる材料で葺くことが必要であります。また、類焼のおそれのある部分のドアや窓等の開口部も周辺の建物の火災によって類焼するおそれがあるので防火戸とすることが必要であります。

図1.7 軒先の延焼経路
[注]軒は類焼危険が大であり、たる木とけたの間から火気が進入するおそれがある。軒天井や面戸板は不燃材料とする。換気口を設ける必要がある場合は有孔板二重張りとし、目違いに取り付ける。軒先に木材がある場合は不燃材料でカバーする。([出典] 菅原進一:日経アーキテクチュア、日経マグロウヒル、p.122、1981.7)

木造住宅の火災対策(内部)

外部の火災対策で述べたように、最近の建築基準法の改正により木造で3階建て戸建て住宅や3階建て共同住宅並びに特殊建築物(不特定多数の人が利用するような病院、百貨店、劇場、映画館などの建物)を建てることができるようになりましたが、これらの建物の場合は、火災をなるべく長く一つの区画内に閉じこめて、安全に避難し、消火活動を素早くできるようにスレート系や石膏ボード等の燃えにくい材料を内装材として張り、建物内の区画を造ることが防火対策として必要です。

長屋住宅や共同住宅の場合は、隣の住戸に火災が拡大しないように隔壁や天井・床部分は耐火性能の高い不燃材料等を張って区画する必要があります。建物の室内でも大きな断面の集成材を用いると耐火性能があると判断され、使用が認められています。木造3階建て戸建て住宅の場合は、小径12cm以上の柱やはりは露出して使用することも認められています。また、台所のように火を使うような場所では、火災が発生する危険性が高くなりますので、壁や天井に燃えにくい不燃材料を張ることが必要です。

火災拡大を防ぐ上で最も重要なのが開口部の性能です。室内のドアが開いていれば火災は簡単に拡大し、窓が開いていたりガラスが熱で簡単に落ちたりすると外部から大量の空気が供給されて火災が大きくなることや、1階の窓から出た炎が2階の窓を破って進入することがあります。従って、簡単に燃え抜けないようなドアや窓が必要ですが、現在では木製ドアや木製サッシが防火戸として認められています。木製防火ドアでは、木製部分が燃え抜けないように十分な厚みが必要であり、両面に化粧合板を張って内部にロックウール等の断熱材を充填したもの、パーティクルボードの両面に化粧材を張ったもの、無垢の木材で構成されたものなどが防火戸として認められています。また、このようなドアはドア枠とドア本体との隙間に、熱膨張剤を有効に使用することが防火戸として重要となります。

木製サッシの場合は、ガラスが脱落すると耐火性能がなくなりますので、網入りガラスや耐熱ガラスを用いること、木材部分の断面を大きくしてガラスが脱落することを防ぐことを考慮したものが防火戸として認められています。

木造住宅と地震

地震による住宅被害

先の兵庫県南部地震(阪神淡路大震災)で木造住宅は大きな被害を受けました(写真1)が、大地震にあっても被害を防ぎ、耐震的にするには、表1のような注意が必要です。軸組構法を例に被害との関係を示します。


建物の形状 / 耐力壁の配置


表1 軸組構法を耐震的にするための注意事項