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集成材木質建材の種類と特徴

製材集成材合板パーティクルボードファイバーボード改良木材薬剤処理床板国産材を使用した内装材製品

集成材

化粧ばり 集成柱

集成材は、ひき板または小角材を木目方向に平行にして、厚さ、幅、長さ方向に集成接着したものです。集成材はその用途によって、建物の内部造作などの非耐力部材に用いられる造作用と、建物の骨組みなど耐力部材に用いられる構造用の2種類に大きく分けられます。

平成8年現在、日本農林規格(JAS)では、造作用集成材、化粧ばり造作用集成材、化粧ばり構造用集成柱、構造用集成材の4つに分類して、その品質や性能の基準を定めています(表1)。造作用や化粧ばり集成材は我が国独特のもので、国際的には集成材といえば構造用集成材を指します。

我が国における集成材の生産量(日本集成材工業協同組合調べ)、及び輸入量(大蔵省関税局「日本貿易統計」より)の推移を図1に示します。我が国の集成材工業は構造用集成材を中心にして昭和20年代後半に興りますが、これが鉄との競争に敗れた後は、造作用集成材を生み出して独自の道を歩み出します。その後も、化粧ばり構造用集成材で在来軸組住宅の管柱市場に参入したり、また昭和61年にはJASや許容応力度を制定して大断面構造用集成材を復活させるなど、新しい市場を開拓することで、右肩上がりの成長を続けています。最近の傾向としては、住宅の高気密・高断熱化や工期短縮により乾燥材のニーズが高まる中、一時低迷していた管柱が生産を伸ばしている点や、円高を背景に輸入集成材が急増している点が特徴です。

国内の集成材メーカーは約290社ほどですが、北海道、秋田県、愛知県、岐阜県、奈良県などに比較的多くあります。これは、良質の広葉樹材や化粧単板の原料になる銘木の産地が近くにあることと関係があるようです。

図1 集成材の供給量の推移

集成材の種類

集成材の製造法

集成材の一般的な製造工程を以下に述べます。

集成材の接着(ロータリーコンポーザー)

  1. 乾燥:20~50mm厚のひき板を3~10日間の人工乾燥で、含水率8~15%にします。
  2. 寸法調整と品等区分:乾燥したひき板を、プレーナやモルダーで寸法を整えます。この後、節や目切れなどの欠点や、曲げたときのたわみ量の大小を表す曲げヤング率により、ひき板の品等区分を行います。
  3. ひき板の縦つぎ・幅はぎ:欠点を切除した短尺のひき板はフィンガージョイント等の方法で長さ方向の寸法を、また幅の狭い板はその側面を接着する幅はぎにより幅方向の寸法を、製品寸法に合わせて調整します。
  4. ひき板の組合せ:集成材製品の形状寸法と品質に合わせてひき板を組み合わせます。曲げ応力が作用する梁の場合、外層に良質、内層に低質のひき板を配置することで性能的にも資源的にも原料を有効的に利用します。
  5. 接着剤塗布:スプレッダーやエクストルーダーを用いてひき板材面に接着剤を塗布します。
  6. 圧締養生:接着剤を塗布したひき板を積層し、ネジクランプや油圧プレスを使って5~15kgf/cm2の圧力を加え、所定の時間保持します(写真)。短時間で硬化する接着剤を使用したり、高周波加熱を行って圧締時間の短縮を図ることもあります。
  7. 整形・化粧ばり:解圧した後、集成材を帯鋸盤やリッパで裁断し、モルダー等で平削りします。化粧ばり集成材ではこれらの表面に、厚さ0.6~1.5mmほどにスライスした化粧薄板を重ね合わせ、ホットプレス等で接着します。
  8. 仕上げ:必要に応じて、ダブルサイザでの長さ決め、モールダでの溝付け、スーパーサーフェーサでの表面仕上げをした後、防湿や表面保護をかねて包装します。

集成材の特徴

防腐処理ひき板を接着した高耐久性集成材と木造橋
(愛媛県:神の森大橋)

集成材は、より高次の加工が施された工業製品で、製材品に比べて次のような優れた特性を持っています。

  1. 所定の含水率に乾燥したひき板からなる集成材は、材内部の含水率のバラツキが少ないので、割れ、そり、曲がり、ねじれ等の狂いが発生しにくく、また機械による仕上げ加工でもより高い寸法精度が期待できます。
  2. 集成材は、乾燥されて腐りにくいこと、接着技術の進歩で接着信頼性が向上したこと等から、高い耐久性能を持つといえます。さらに、防腐処理を施したひき板を積層接着することで、部材内部まで防腐薬剤が注入された高耐久性部材(写真)を製造することも可能です。
  3. ひき板の節、目割れ、割れなどの欠点の大きさや、曲げヤング率などによりひき板の等級区分を行ない、これらを適切に配置することで、高強度でバラツキの少ない高い信頼性を持つ木材製品を製造することができます。
  4. ひき板を縦つぎや幅はぎすることによって大断面長尺材を製造することができます。また、適当な治具を用いることによって、矩形、I形、箱型など任意の断面形状の部材や、通直、テーパー、わん曲など自由な形状の部材を製造することもできます。
  5. 火事でアメのように曲がった鉄骨とそれを支える木製の梁

  6. 木材は燃えるので、建材としての使用が制限されています。しかし、木材は燃えても表面にできる炭化層が内部を保護するので、高温下での鉄のような急激な強度低下(写真)は生じません。このため、大断面集成材のような大断面部材を用いるならば、防火構造にする必要がある建築物でも木造で建てることが可能です。
  7. 接着剤の種類によっては接着層が見えることもありますが、木材としての外観、加工性、調湿機能、温かみある触感など、木材のよさはそのまま受け継いでいます。

造作用集成材

造作用集成材

造作用集成材の製品には、テーブルカウンターのように集成接着した素地をそのまま生かしたものや、日本間の鴨居や長押等の造作材として、表面に美しい材面をもつ化粧用薄板を張りつけたものなどがあります。(写真)木造住宅ばかりでなく、RC集合住宅の内装等にも需要があります。良質の製材品が減少しかつ高価になった今日、これらを集成材で代替することが多くなってきています。

造作用の場合、外力があまりかからない部材に使われるので、高い強度性能や接着性能は必要ではありません。したがって、ひき板は短いものでもよく、またその縦つぎは突付けでもかまいません。そのかわりに材面の美しさが要求されるので、狂い、割れ、化粧単板のはく離などは許されず、ひき板の含水率管理、欠点の除去、調色、仕上げなどに細心の注意が払われます。最近では、作業性などから造作用にもフィンガージョイントが使われることも増えているようです。縦つぎや積層には、ユリア樹脂や、酢酸ビニルエマルジョン系の接着剤が主に使用されています。

広葉樹材製品は素地のまま使われますが、針葉樹材製品は表面に化粧張りをしたものが多く、敷居、框、階段板の上面などには1.5mm、柱には1.2mm、その他の部材には0.6mm以上の厚さの化粧薄板がはられています。

造作用集成材製品に関するJASでは、浸漬剥離試験によって接着性能を、含水率試験で乾燥の度合を、また高温乾燥によって化粧張りの表面割れに対する抵抗性が試験され、その品質保証を行うようになっています。

構造用集成材

直径140m、高さ49mの多目的ドーム
(島根県:出雲ドーム)

構造用集成材のセールスポイントである強度性能は、実大規模の試験を常に行って保証するのが理想的ですが、これにはコストも労力も時間も必要です。そこで、JASの定める性能に適合する製造方法が製造基準で定められています。もちろん、製造基準に則って製造されていても、性能の確認を行うための抜き取り検査は義務づけられています。そして、JAS基準に適合した集成材には、設計に必要な許容応力度が与えられます。

JAS基準を満たした構造用集成材には、建築物の規模、使用される環境、荷重の種類を問わずその性能を発揮することが求められます。しかし、接着性能のように使用環境の影響を大きく受けるものについては、絶えず温湿度の変化や生物劣化に曝されている屋外のような厳しい環境(使用環境1)と温湿度変化が穏やかな室内のような環境(使用環境2)とを区別し、それぞれの環境に適応可能な接着剤が選択できるようになっています。

わが国で集成材が建築に使われ始めたのは昭和20年代後半ですが、途中の空白期を経て、現在までに4000棟余りの集成材建築が建てられています。当初はシンプルな3ヒンジ山形アーチ構造の体育館、集会所、工場等が多く作られましたが、最近では、この他にポストアンドビーム、ドーム、立体トラスなど構造も多様化し、多目的ドーム(写真)、パビリオン、店舗、橋等様々な用途に使われています。長野五輪のスピードスケート会場’エムウエーヴ’や、建築中の’大館ドーム’は、工法的にも規模的にも世界に誇れるものです。これらが可能になった背景には、集成材の製造技術のみならず、接合技術を含めた設計・施行技術も飛躍的に向上したことを忘れることはできません。